2015 International Aneurysm CFD Challenge — 画像だけ渡すと WSS はどれだけ割れるか
Real-World Variability in the Prediction of Intracranial Aneurysm Wall Shear Stress: The 2015 International Aneurysm CFD Challenge
形状抽出から任せたとき、WSS の予測はどれだけばらつくのか。正規化すれば減るのか。
26チームに DICOM 画像だけを渡した結果、瘤内平均 WSS のばらつきは変動係数48%(症例によっては60%)。ところが母血管の WSS で正規化すると18%まで下がります。ばらつきの主因は形状抽出と流入条件で、経験年数は有意な予測因子ではありませんでした。
当社の視点
2013年のチャレンジが形状を配って条件だけ自由にしたのに対し、こちらは画像から任せています。現実の受託解析に最も近い設定で、当社が「同じ症例を別の会社に出したら値が違う」と言われたときに示せる根拠です。重要なのは処方箋まで示されている点で、母血管で正規化すると変動係数が48%から18%へ、2〜3分の1に下がります。粘度 3.7 cPoise・密度 1.06 g/cm³ への統一、内頸動脈まで含めた形状範囲、流量の妥当性確認という具体的な推奨は、そのまま社内標準に落とせます。
扱う範囲
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01
チャレンジの設計
中大脳動脈瘤5例の3D回転血管撮影の DICOM 画像のみを配布し、形状抽出・境界条件・流量・血液物性・ソルバーをすべてチームに委ねました。26チームが28データセットを提出。自己申告の経験は高5・中13・低8チーム。
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02
絶対値のばらつき
瘤内平均 WSS の変動係数は48%(症例により最大60%)、最大 WSS は48%、低ずり面積は63%。ある1チームは中央値の約400分の1という値を出しました。流量の変動係数は23%、MCA 速度は25%、Reynolds 数は26%。
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03
正規化で3分の1になる
母血管の WSS で正規化すると、平均 WSS は変動係数18%(最大32%)、最大 WSS は22%、低ずり面積は30%。絶対値のまま報告するより 2〜3倍ばらつきが小さいです。
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04
何が効いたか
形状抽出が第一。3分の2のチームが中大脳動脈で切り、経験の高いチームは全て内頸動脈を含めていました。同一チーム内でも自動と手動の抽出で MCA の WSS が45%違いました。流入条件が第二で、流量の割り当て方が10通りに分かれました。
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05
経験年数は効かなかった
経験の高低は変動の有意な予測因子ではありませんでした。低経験チームは提出全体の32%に対し外れ値の43%を占めたが、中央値には経験による有意差がありませんでした。
ばらつきの大きさ(変動係数)
数値で確かめる
| 項目 | 値 | 補足 |
|---|---|---|
| 参加 | 26チーム / 28データセット | 中大脳動脈瘤5例。画像のみ配布 |
| 瘤内平均 WSS(絶対値) | 48% | 症例によっては60% |
| 瘤内平均 WSS(正規化後) | 18% | 母血管の WSS で割る。最大32% |
| 最大 WSS | 48% → 22% | 絶対値 → 正規化後 |
| 低ずり面積 | 63% → 30% | 絶対値 → 正規化後 |
| 設定流量 | 変動係数 23% | 中央値 2.4 mL/s。文献範囲 1.39〜3.47 mL/s |
| 同一チーム内の抽出差 | MCA の WSS が45%違う | 自動抽出と手動抽出の比較 |
| 血液粘度 | 3.5 と 4.0 cPoise に二分 | 13%の差。全チームが剛体壁・ニュートン流体 |
いずれもこの論文が報告した値です。
実務チェック
- WSS は母血管の値で正規化して報告します。ばらつきが2〜3分の1になります。
- 形状は内頸動脈まで含めて抽出します。中大脳動脈で切ると速度分布が発達しません。
- 設定流量を文献範囲(1.39〜3.47 mL/s、中央値約2.43)と照合します。
- 血液物性を 3.7 cPoise・1.06 g/cm³ に統一し、不要なばらつきを消します。
この研究の限界
- ばらつきの要因(形状抽出・ソルバー・境界条件)を個別に切り分けてはいません。
- 対象は単一の脳血管領域の分岐部動脈瘤5例で、一般化できるとは限りません。
- OSI など時間依存の指標と拍動流の影響は対象外です。
- 画像ベース CFD における「真値」が定義されていないと述べています。
書誌情報
| 原題 | Real-World Variability in the Prediction of Intracranial Aneurysm Wall Shear Stress: The 2015 International Aneurysm CFD Challenge |
|---|---|
| 著者 | Valen-Sendstad K, Bergersen AW, Shimogonya Y, Goubergrits L, Bruening J, Pallares J, Cito S, Piskin S, Pekkan K, Geers AJ, Larrabide I, Rapaka S, Mihalef V, Fu W, Qiao A, Jain K, Roller S, Mardal KA, Kamakoti R, Spirka T, Ashton N, Revell A, Aristokleous N, Houston JG, Tsuji M, Ishida F, Menon PG, Browne LD, Broderick S, Shojima M, Koizumi S, Barbour M, Aliseda A, Morales HG, Lefèvre T, Hodis S, Al-Smadi YM, Tran JS, Marsden AL, Vaippummadhom S, Einstein GA, Brown AG, Debus K, Niizuma K, Rashad S, Sugiyama SI, Owais Khan M, Updegrove AR, Shadden SC, Cornelissen BMW, Majoie CBLM, Berg P, Saalfield S, Kono K, Steinman DA |
| 掲載誌 | Cardiovascular Engineering and Technology(2018) |
| DOI | 10.1007/s13239-018-00374-2 |
| PMID | 30203115 |