WSS・OSI と壁面近傍の指標

壁面せん断応力とその派生指標。値の絶対値よりも、算出条件を揃えることが比較の前提になります。

壁面せん断応力(WSS: Wall Shear Stress)は、血流が血管壁を擦る力の大きさを表す量です。内皮細胞の応答や動脈硬化の局在と関連づけて論じられてきた指標で、そこから派生する OSI(振動せん断指数)、TAWSS(時間平均 WSS)、RRT(相対滞留時間)も広く使われています。

絶対値の比較が難しい理由

WSS は壁面での速度勾配から求めるため、壁の位置をどこに置くかその近傍の速度をどう補間するかに強く依存します。

したがって、文献に載っている数値と自分の解析結果を直接比べるのは、多くの場合そのままでは成立しません。

実務での使い方

同一プロトコル内での相対比較、あるいは同一症例の経時変化として使うのが現実的です。群間比較を行う場合は、全例で撮像条件と解析条件を揃えたうえで、条件を論文中に明記します。

解析条件が結果に与える影響の大きさは、同一データを複数グループが解析した比較研究から把握できます。値が合わないこと自体は珍しくありません。

このトピックの文献(3 件)

Reviews in Cardiovascular Medicine 2025 解析実務に直答

大動脈疾患における 4D Flow MRI 由来 WSS の役割 — 総説

The Role of 4D Flow MRI-derived Wall Shear Stress in Aortic Disease: A Comprehensive Review

大動脈疾患において 4D Flow MRI から求めた壁面せん断応力(WSS)がどのように使われてきたかを横断的にまとめた総説です。WSS は空間分解能や壁位置の決め方に敏感で、報告値をそのまま横並びに比較できない指標です。自分の解析結果を文献値と照らし合わせたいとき、どの範囲なら議論が成立するのかを把握する目的で読むと有益です。

Magnetic Resonance in Medical Sciences 2022 解析実務に直答 技術動向

4D Flow MRI における血行力学パラメータ — 数学的定義と臨床応用

Hemodynamic Parameters for Cardiovascular System in 4D Flow MRI: Mathematical Definition and Clinical Applications

WSS・OSI・エネルギー損失・渦度といった血行力学パラメータについて、数式としての定義と臨床での使いどころを対応づけて整理した総説です。指標名は同じでも定義や計算条件が異なれば値は一致しません。解析結果を他施設や他ソフトの数値と比べる前に、自分がどの定義で計算しているのかを確認する目的で参照する価値があります。当社の共同研究者による論文です。

Cardiovascular Engineering and Technology 2018 解析実務に直答

頭蓋内動脈瘤の WSS 予測における現実のばらつき — 2015 International Aneurysm CFD Challenge

Real-World Variability in the Prediction of Intracranial Aneurysm Wall Shear Stress: The 2015 International Aneurysm CFD Challenge

同じ症例データを複数のグループが独自に CFD 解析し、得られた壁面せん断応力がどれだけばらつくのかを比べた国際チャレンジの報告です。「CFD の結果はどこまで信頼できるのか」という問いに正面から答えた研究で、解析条件の設定が結果に与える影響の大きさを知る上で欠かせない一報です。他施設の報告値と自分の結果が合わないときに、まず読むべき文献として案内しています。

最終更新 2026-09-03