第3章 / 全8章

計算した壁面せん断応力は、血管壁の組織変化と対応するのか

画像から計算した壁面せん断応力は、壁の組織と対応します。それでも施設をまたいで使える正常値はありません。この二つが同時に成り立つ理由を、大動脈と冠動脈で見ます。

この章が答える問い

計算した WSS は壁の実体を反映しているのか。その値を文献と比べてよいのか。

計算した壁面せん断応力の分布を血管の3次元形状に色で載せると、それらしい絵になります。問題は、その色が壁の実体を反映しているのかどうかです。

内皮細胞の実験1は、流れが遺伝子発現を変えることを示していました。しかし実験室の細胞と、患者の大動脈の壁は別物です。この章では、3-1同じ人の同じ血管で流れの指標と壁の組織を直接突き合わせた研究から始めて、3-2部位ごとの実測値、そして 3-4「値を比べられるのか」という問いまで進みます。

引用文献(1 本)

  1. 1

    Chiu JJ, Chien S. Effects of disturbed flow on vascular endothelium: pathophysiological basis and clinical perspectives. Physiological Reviews. 2011.↩

    動脈 10〜70、病変好発部 0.5 dyn/cm² 内皮のスイッチが切り替わる境目

この章のセクション(4 記事)

  1. 3-1 同一患者内での高 WSS 部と正常部の組織比較 二尖弁大動脈症で高 WSS 領域と正常 WSS 領域から壁組織を対にして採ると、高 WSS 側でエラスチンが減り線維が細くなっていました。 文献 2 本
  2. 3-2 腹部大動脈拡張部の WSS と OSI の実測値 腹部大動脈の拡張部では収縮中期の WSS が 0.20 Pa 対 0.68 Pa、OSI が 0.093 対 0.041 です。3分の1以下に下がり、2倍以上に上がります。 文献 2 本
  3. 3-3 冠動脈 WSS の閾値枠組みと臨床エビデンス 1 Pa 未満を低、1〜7 Pa を正常から高、7 Pa 超を高とする合意枠組みがあります。ただし診断精度が上がることと、患者の利益が増えることは同じではありません。 文献 1 本
  4. 3-4 自施設で測った WSS を、文献値と比べられるのか 大動脈疾患の総説は、疾患ごとの WSS 値も正常範囲も示していません。装置メーカー間、磁場強度間、そして後処理ソフト間で値が有意に違うためです。 文献 4 本

最終更新 2026-09-07